都合のいいオトコ
コンビニの駐車場。いつもの車を前にして、私はケータイをカバンから出した。
タクシーを呼べば、ミツルは納得するんやろう。
たったひと駅やから、歩いても帰れる距離。そう考えて、歩くつもりでおったけど──
「乗ったらええやん」
ミツルの手がケータイを持つ手を覆ってくる。
タクシー会社に電話をかけるのを止められた。
「……」
自分がただの駄々っ子に思えてきて、これ以上、意地を張るのも嫌になってた。
でも、それで車に乗れば、送ってもらいたくて駄々をこねてたように思われるんやないか。
そんな考えもあって、どうしようか迷ってた。
「送るから」
キーでロックを外したミツルは、そう言って、助手席のドアを開く。
離れた場所で、動かずに、その様子を見ていると、
「はよ」
うんざりした口ぶりで急かされた。
──しぶしぶ乗り込んだ、ミツルの車。
私は一体、どうしたいんやろう。
関係を終わらされることに苛立ったけれど、それでも、これでよかったんやと納得する気持ちもあって。
けど……。
“何してん”
目の前に現れたときは、嬉しかった。
手を引かれて歩いてるときの私は、電話をしてるミツルのことを、じっと見つめてしまった。
終わってなかったことにホッとしながら。