都合のいいオトコ

「俺がひとりの間はええよ」

ドアを開けようとする私に、ミツルはそう言うた。

「……え?」

言ってる意味がわからんくて首を傾げると、ミツルはハンドルに両腕をかけ、面倒くさそうにため息をついた。

「彼女ができたらやめるけど、それまでなら、俺も暇やし……送り迎えくらいはしたる」

気だるげな態度で言われる、これからのこと。

「もういいよ。私に付き合ってたら寝不足になるやん」

これ以上は悪いなと思って、遠慮してたら──

「電話かけといで。……“誰”とか、もう言わんから」

ミツルは私の言葉を無視して、この関係を続ける方向へ持っていった。彼女ができるまでという期限付きで。
< 92 / 142 >

この作品をシェア

pagetop