都合のいいオトコ

好きにさせる魔法



「カットモデル?」

12月半ばのことやった。

遊園地の近くで車を停めたミツルから、そんな誘いをかけられた。

「切りたいって言うてなかった? 行く時間がないって」

「言うたけど……」

「キャバクラがない日の営業後か、逆に遊園地が休みって日の朝方……キャバクラが終わってからかな。ウチの店で切るか?」

「朝方とか大丈夫なん?」

「普通は営業後やけどな。大丈夫やよ。……その代わり、次の日ははよ行って、店の鍵開けとかなあかんけど」

カットの練習として切ってくれるから、料金もタダやと言われ、カットモデルなんてしたことなかった私は、興味本位でその話を引き受けた。

「キャバクラ休むわ」

「別に休まんでも……」

「お店の人に迷惑かけたくないし。普通は営業後なんやろ?」

「そうやな。……じゃあいつにする?」

タダやから美味しいってのもあったけど、ミツルが切るところを見てみたいって気持ちもあった。

数日後、遊園地の仕事から帰った私は、家で少しだけ仮眠を取って、夜にミツルの店がある地域の最寄り駅へ向かう。

駅から近いということもあって、ミツルは歩いて迎えに来てくれた。
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