都合のいいオトコ

美容室の前に着いても、閉店後ということもあって、窓はロールカーテンが下ろされてるから、室内から漏れる明かりしか確認できへん。

「あ、こんばんは~」

ミツルの後に続いて、店内へと足を踏み入れると、中で掃除をしていたスタッフさんたちが微笑みかけてくる。

「そこで待ってて」

準備をしに行ったミツルに言われ、受付カウンターのそばにあるソファーに腰を下ろした。

店内は白を基調とした清潔感のある空間。

飾ってるインテリアも雑貨屋さんのように可愛いものばかりで、勝手にシンプルなお店をイメージしていた私は、待ってる間、店内をキョロキョロと見回していた。

そうこうしてると、奥へ行ってたミツルが受付カウンターのところまで戻ってきてる。

カウンターにはふたりの女性スタッフがおって、そのうちのひとりがミツルに笑みを浮かべていた。

「なんやねん」

「え~」

ミツルはバインダーでその子の頭を軽く叩くと、叩かれた子はケタケタと楽しそうに笑ってて。仲がよさそうやった。

「これ書いて」

名前や連絡先から始まって、髪の悩みなどまで記入する用紙を手渡される。

ミツルからバインダーを受け取ってたとき、

「前にミッツーが……」

「あっ、その人?」

カウンターにいた女性スタッフふたりが、こっちを見ながら話してた。

聞こえてくる言葉からして、ミツルから私についての何らかの話を聞いてるんやなとわかった。
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