らくがきと恋心
「楽しかったね、半年間」
そんなセリフに、耳を塞ぎたくなるほど恥ずかしくなった。
わざとなの?
普通、気恥ずかしくてそんなこと言えないよ。
ハッシュの人は、ネクタイの色が私のリボンの色と同じ。
つまり、同学年ということ。
「…ほんとに、アナタが?」
私の疑いの眼差しに、彼は笑った。
「ハハ。疑われてる?」
私は無言でコクリと頷く。
「手、出して」
「え?」
「だから、手。はやく」
「は、はいっ」
私がおずおずと右手を差し出すと、彼は筆箱からボールペンを取り出して私の手の甲に何かを書き始めた。
「ちょ、ちょっと」
「動くなって」
強引に手を固定されて、身動きも取り難い。
通り行く生徒たちの視線も気になるし、右手の甲はくすぐったいし、彼の前髪の隙間から見える楽しそうな表情にドキドキするし。
私は床を見つめるしか出来なかった。