王子様はマーメイドを恋の海に溺れさせて
 彼等と遊んだ方が身体能力を存分に活かせるだろうに。キャッチボールをしてもバドミントンをしようと修司は自分が楽しむより、相手を楽しめてるかを尊重した。

「ほら、奈美」

 差し伸べられる手をとり、水際へ。花梨ちゃんは抱き上げられる。

「よーし泳ぐぞ!」

「きゃあ、あははっ」

 修司はお姫様抱っこした花梨ちゃんとダイブ。大きなしぶきがあがる。

「こら、服を着たままじゃない!」

「洗い流してるんだよ!」

 朝比奈兄妹は水中で今日に脱ぐと丸めて、投げてきた。流れ着いた流木を使い衣服を干すと、私はしっかり準備体操をする。

「あれ? 

 屈伸した際、視線を感じて見上げてみた。しかし、降りてきた場所に人の姿はない。

「奈美ちゃん、どうしたの?」

 傾げる私に花梨ちゃんが言う。

「ううん、何でもない」

「早くこっちにおいでよ」

 両手を垂直に上げ、飛び込む。指先から頭、お腹、足と順番に入水する事を意識する。

「ひゅー、奈美の飛び込みはさすがに綺麗だなぁ」

「島の外の子にも負けないもんね!」

 二人に拍手を贈られ、まんざらな気分ではないと短い髪を掻き上げた。
 アーティスティックスイミング選手を本格的に目指すまで私は短髪だった。
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