王子様はマーメイドを恋の海に溺れさせて
「天下の西園寺グループ様がついてりゃ、おばさんも安心だろ。カルテ等、必要なら言ってくれ」

「花梨さんの傷についてもグループでお役に立てれば、と。補償面の話は弁護士を介してやりとりしましょう」

「おう、分かったよ」

 修司は修司で業務連絡をするみたい。

(これでいいの? このままでいいの?)

 唇を噛む。

(いいはずがない!)

「修司、花梨ちゃん、私は二人が幼馴染で良かったと思ってる。それだけは本当だから!」

 ーーシンッ、室内が静まり返る。

「修司君、花梨さん、奈美と一生会えなくてもいいのですか? この場に集まったのは仲直りをしたかったんじゃないんですか?」

 二人は黙ったまま。改めて着席する意思もなさそう。

「分かりました、奈美帰ろうか。ここにいても時間の無駄にしかならないよ。残念ながら、彼等は貴女との関係修復を望まないんだ」

 手を引かれつつ、幼馴染へ何度も振り返った。だけど修司も花梨ちゃんも私を見てくれない。俯いたり窓の外を眺めたりでやり過ごそうとしている。

(ごめんなさい、ありがとう)

 心の中で繰り返し唱える。
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