王子様はマーメイドを恋の海に溺れさせて
手を引かれながら視線を海へ滑らす。豪華客船オリヒメの姿は無かった。
「また嵐が来るみたいですね〜」
花梨ちゃんは繋いだ手の傷を見ている。
「私、荒れて濁った海や吹き飛ばさそうな風の音を見聞きすると、今も少しだけ不安になります。怖いというより嵐が嫌い」
「……うん、私も」
「けどね、奈美先輩が隣に居てくれれば平気。安心します」
「そっか」
身体を寄せてきて、無邪気に信頼を示す。この柔らかい感触を突き放すなんて私には出来ない。
「先輩が久し振りにうちへお泊まり! 嬉しいな!」
「夜更かしは出来ないよ。お腹がいっぱいになればすぐ寝ちゃうかも?」
「えー! せっかくですし、お布団並べて女子トークしましょうよ!」
「女子トークって……私、幾つだと思ってるのよ」
「女の子は何歳になっても乙女なんです!」
「花梨ちゃんは乙女でも私は子供じゃない」
半身を花梨ちゃんへ傾け、そう言うのが精一杯だ。修司は無言で後ろに続く。
「いつまでも子供じゃいられないのよ」
生暖かい空気が三人の間を通り抜けていく。
■
ーー真夜中、私は窓を叩く音で目を覚ます。
朝比奈家の団欒に混ぜて貰い、明るい雰囲気に飲み込まれるよう就寝したものの、夢の扉を荒々しくノックされた。
隣を見れば花梨ちゃんがぐっすり眠っている。蹴り飛ばされたブランケットを掛け直してあげると擽ったいのか、寝返りを打つ。
(お水、飲もう)
段々と暗闇に目が慣れ、リボンとレースでラッピングされた彼女らしい内装を見回す。
と、棚へ並べられたぬいぐるみ達がこちらを監視していた。
「また嵐が来るみたいですね〜」
花梨ちゃんは繋いだ手の傷を見ている。
「私、荒れて濁った海や吹き飛ばさそうな風の音を見聞きすると、今も少しだけ不安になります。怖いというより嵐が嫌い」
「……うん、私も」
「けどね、奈美先輩が隣に居てくれれば平気。安心します」
「そっか」
身体を寄せてきて、無邪気に信頼を示す。この柔らかい感触を突き放すなんて私には出来ない。
「先輩が久し振りにうちへお泊まり! 嬉しいな!」
「夜更かしは出来ないよ。お腹がいっぱいになればすぐ寝ちゃうかも?」
「えー! せっかくですし、お布団並べて女子トークしましょうよ!」
「女子トークって……私、幾つだと思ってるのよ」
「女の子は何歳になっても乙女なんです!」
「花梨ちゃんは乙女でも私は子供じゃない」
半身を花梨ちゃんへ傾け、そう言うのが精一杯だ。修司は無言で後ろに続く。
「いつまでも子供じゃいられないのよ」
生暖かい空気が三人の間を通り抜けていく。
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ーー真夜中、私は窓を叩く音で目を覚ます。
朝比奈家の団欒に混ぜて貰い、明るい雰囲気に飲み込まれるよう就寝したものの、夢の扉を荒々しくノックされた。
隣を見れば花梨ちゃんがぐっすり眠っている。蹴り飛ばされたブランケットを掛け直してあげると擽ったいのか、寝返りを打つ。
(お水、飲もう)
段々と暗闇に目が慣れ、リボンとレースでラッピングされた彼女らしい内装を見回す。
と、棚へ並べられたぬいぐるみ達がこちらを監視していた。