孕むまでオマエを離さない~孤独な御曹司の執着愛~
以前住んでいたマンションにあった食材を、あれから海星さんの部屋に運んだ。
その中には実家の焼き菓子もあり、彼も食べている。

「……まあ、身内の私が言うのもなんですが、そこらの高級店と遜色ないと思ってますけどね」

なのに大人気店とはいかないのは、プロモーション不足と父の経営方針のせいだろう。
自分の手の回る範囲でしか作らない、それが父の拘りだ。
だからたくさん作らないのでそれほど売り上げが上がらない。
職人としての父は尊敬しているが、そのせいで収入が思わしくないのは悩ましい問題だった。

「じゃあ、大丈夫だ」

うん、と海星さんが力強く頷く。
それで安心できた。

車はそのうち高速に乗った。

「正直にいえば俺は、跡取りができたほうに社長を継がせるとかナンセンスだと思っているし、社長を継ぎたいとも思ってない」

「え?」

思わぬ唐突な告白につい、彼の顔を見ていた。

「でも、海星さんは社長になりたいから私と契約したのでは……?」

俺の子を妊娠してくれと言われた。
だからこそ、彼は社長になりたいのだとばかり思っていた。

「……海星」

不機嫌に彼がぼそっと落とす。

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