孕むまでオマエを離さない~孤独な御曹司の執着愛~
「でも一士の入社と同時に父から無理矢理、転職させられた。
ようするに、お守りだ」

「ああ……」

彼はなんでもないように言っているが、その苦労が偲ばれる。
一士本部長のトラブルや失敗はだいたい、海星さんが尻拭いしていた。

「弟を……一士をどう思う?」

その問いにはなんと答えていいかわからずに黙ってしまう。
我が儘、横暴、歩くセクハラ。
悪口ならいくらでも出てくるが、それ以外が思いつかない。

「兄相手に言いづらいよな」

困ったように海星さんは笑っているが、そうともなんとも答えられなかった。

「アイツが社長になったら、あっという間に会社が潰れるのは目に見えている」

それは確かにそうだろう。
今だって一士本部長はその横柄な態度で関わる企業から反感を買っている。
それをどうにか海星さんが取り持っている状態だ。
一士本部長が社長になればますますつけあがり、海星本部長の手に負えなくなるかもしれない。
そうなれば会社は潰れるだろう。

「別にあんな会社、潰れればいい。
でも、従業員は?
その家族は?
取り引きのある会社にだって迷惑をかける。
だから俺が、社長になると決めたんだ」

< 113 / 248 >

この作品をシェア

pagetop