孕むまでオマエを離さない~孤独な御曹司の執着愛~
「えっ、大丈夫ですよ。
気にしないでください」
海星さんの事情は有名だし、わかっているうえでこの契約を受け入れた。
それに悪いのは彼じゃないから、詫びる必要なんてない。
「……ありがとう」
彼の声は泣き出しそうで、私の胸がぎゅっと締まった。
車は高速を下り、山間の道を進む。
高速に乗ってからそろそろ二時間が経とうとしていた。
「あのー、海星さん?」
「ん?
もしかしてトイレか?
しまったな、この辺りはコンビニもないから……」
彼は心配してくれるがそうじゃない。
それに高速を下りる前、最後のパーキングに寄ってくれたのでその心配はなかった。
「あ、いえ。
それは大丈夫なんですが。
まだかかるんですか」
「ああ。
もう少しで着く」
……もう少しってどれくらいなんだろう?
周囲を見て不安になった。
まさしく山道!という道を車は走っている。
確かにこれではコンビニはないだろう。
社長は会社近くのマンションに住んでいて、たまにしか家に帰らないというのは納得だ。
ようやく山を越えた先には町が広がっていた。
けれどそこまで下りず、中腹にある大きな屋敷に海星さんは車を入れた。