孕むまでオマエを離さない~孤独な御曹司の執着愛~
「凄いですね」
そこはまさしく、名家というのがふさわしい大きな屋敷だった。
「昔はここいら一帯の大地主だったんだ」
こそっと耳打ちされ、納得した。
「ただいまかえりました」
玄関で母ほどの年の女性が出迎えてくれた。
そのまま長い廊下を歩き、庭に面した座敷に通される。
海星さんに指示され、下座に彼と並んで座った。
しばらく待ったがお茶を出されて以後、誰も来ない。
どこかにししおどしでもあるのか、カコーンと長閑な音がした。
「えっとー、海星、さん?」
「まだ父が帰ってないか、母が会いたくないとごねているのかのどちらかだと思う」
私の戸惑いに気づいたのか、彼が苦笑いで説明してくれる。
さらに少し待った頃、どすどすと乱雑な足音と、甲高い女性の声が響いてきた。
「いっそ、帰ってこなければよかったのに」
「そういうわけにもいかんだろ」
言い争いながら年配の男女が入ってくる。
もちろん、男性は盛重社長だ。
「待たせたな」
まったく悪いなんて様子はなく、社長が目の前に座る。
女性――母親は嫌々といった感じで腰を下ろした。
すぐに新しいお茶とケーキが運ばれてくる。