孕むまでオマエを離さない~孤独な御曹司の執着愛~
ただし、私たちのお茶は淹れ直してもらえなかった。

「それで。
話とは?」

ちらりと社長の視線が、私へと向かう。
それはまるで値踏みされているようで、嫌な感じがした。

「結婚いたしましたので、ご報告に上がりました」

実の親相手に海星さんは座布団を避け、頭を下げた。
私も慌てて同じようにする。

「結婚、だぁ?」

不快そうにその語尾とともに社長に右眉が跳ね上がった。

「そこの女と籍を入れたというのか」

「はい。
先日、こちらの女性、坂下花音さんと結婚いたしました」

畳に額を着けたまま、海星さんは頭を上げない。

「親はなにをしている?
仕事は」

横柄な態度で社長は海星さんに問いかけた。

「花音さんのご両親は洋菓子店を営んでおります。
花音さん自身は我が社の開発部に所属する社員です」

「町のケーキ屋風情の娘でお前の部下か」

見下すように言われカッと腹の底に火がついたが、海星さんを不利にするわけにはいかないので、堪えた。

「花音さんは支店勤務ですので、直属の部下ではないです」

冷静に海星さんが訂正する。
それに対する社長の答えはない。

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