孕むまでオマエを離さない~孤独な御曹司の執着愛~
「……まあいい。
お前が誰と結婚しようと問題ない。
後を継ぐのは一士だからな」

はっ、とバカにするように社長が吐き捨てる。

「そうですよ、後を継ぐのは一士です」

さらに母親が追従する。
言い返したい。
後を継ぐのは海星さんだって。
海星さんなら会社を潰し、たくさんの人を路頭に迷わせたりしない。

そっと隣に座る彼の顔を盗み見る。
それにしてもどうして、海星さんは反論しないんだろう。
立場から親の言いなり……は、ありえなさそうなんだけれど。

「わかりませんよ」

ゆっくりと海星さんが頭を上げる。

「私は一士と同じ条件になりました。
あとは一士より先に子供を授かればいいだけの話です」

レンズ越しに彼は、社長と目をあわせた。

「それとも他にもなにか、私に不利な条件でもつけてきますか」

私に見える右頬だけを歪め、彼が不敵に笑う。
みるみるうちに社長の顔も母親の顔も真っ赤に染まっていった。

「愛人の子風情が!」

いきなり水滴が飛んできて、なにが起こったのかわからなかった。
隣を見ると海星さんの前髪からぽたぽたと雫が垂れている。
< 118 / 248 >

この作品をシェア

pagetop