孕むまでオマエを離さない~孤独な御曹司の執着愛~
「花音、なんか怒ってるのか」

普通にしてるはずだった。
なのに彼は気づいてしまうなんて。

「あー、えと。
なんでもない、です」

笑って誤魔化したところで、じわりとなにかが漏れ出した感覚があった。

「あの、えっと。
ちょっと、トイレ……」

そろりと離れ、トイレに駆け込む。
便器に座り脱いだ下着を確認すると、赤く汚れていた。

「……はぁーっ」

大きな失望でため息が落ちていく。
妊娠、できなかった。
海星さんは怒鳴ったりしないだろうが、それでも落胆させるんだろうな。
彼のがっかりした顔を想像したら悲しくなってくる。
早く私が妊娠して、彼を社長にするって誓っていたのに。
なんで私、こんなに役立たずなんだろう。

「花音?
どうした、具合でも悪いのか?
それともそんなに俺の顔が見たくないのか?」

ノックとともに海星さんの声が聞こえてきて自分が随分長い時間、トイレにこもっていたのだと気づいた。

「あっ、なんでもないですよ」

慌てて汚れた下着にナプキンを当てるだけして水を流す。
先週、ふたりで運べる荷物はほとんど運んでしまっていてよかった。

「本当になんでもないのか」

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