孕むまでオマエを離さない~孤独な御曹司の執着愛~
現実の海星さんがあんなことを言わないのはわかっている。
わかっているのにこんな夢を見るのは、私の心がまだ高志に縛られているからだ。

「ピアス、あけたのに……」

無意識に手が、耳のピアスに触れる。
高志を断ち切るためにあけたピアスだが、いまだに私は彼から逃れなれない。
……ううん。
それだけじゃない。
海星さんがただの道具である私を愛しているという理由がわからない。
わからないから「愛している」という言葉は、高志と一緒で私を言いように利用するためではないかと疑ってしまう。

うなされたせいかびっしょりと汗を掻いた身体は気持ち悪く、シャワーを浴びる。

「……愛してる、か」

夢の中で去っていく海星さんに向かって叫んだ台詞を思い出し、嘲笑が漏れた。

……そんなふうに思っていたんだ、私。
道具のくせに何様だよ。

私は道具。
ただの道具。
一士本部長だってそう言っていたではないか。
道具の私が愛されるとかないし、道具の私が愛するとかあってはならない。

着替えながらナプキンがもう少なかったから買いに行かなければと思う。
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