孕むまでオマエを離さない~孤独な御曹司の執着愛~
さらに五分ほど走り見えてきた、小さな家のような建物の横に海星さんは車を停めた。

「ようこそいらっしゃいました」

私たちが車を降りるのと同時に、中から宿の人らしき着物姿の女性が出てくる。
たぶん、女将だろう。

「よろしく頼むよ」

女将に案内されて中に入る。
部屋は広い座敷になっており、その向こうに日本庭園が見えた。

「離れなんだ」

そっと海星さんが教えてくれる。
調度はアンティーク調でお洒落だ。
庭側のガラス障子には部分的にステンドグラスがあしらってある。
ふすまにもモダンというのがぴったりな水彩画が描いてあり、大正時代にでもタイムスリップしたみたいだ。

「気に入ったか?」

無言でうんうんと頷いていた。
こんな素敵なお部屋が気に入らないはずがない。

「よかった」

嬉しそうに海星さんが笑い、私も嬉しくなった。

お部屋でチェックインを済ませる。
ウェルカムドリンクだとスパークリングの日本酒が、おまんじゅうと一緒に出された。

「おまんじゅう?」

意外な気がしながら口に運ぶ。
中は白あんだが、ほのかにチーズの香りがする。
それが甘口のスパークリング日本酒と、あう。

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