孕むまでオマエを離さない~孤独な御曹司の執着愛~
ぼんやりと見える視界を頼りに海星さんの隣に浸かって気づいた。

「……眼鏡」

「は?」

「なんで眼鏡、かけてるんですかー!?」

そう。
彼の顔の上には今まで見たことがない、グレー縁のプラスチック眼鏡がのっている。

「風呂用眼鏡だが?」

なに当たり前のこと聞いてんの?
とでもいう感じだが、さっき「眼鏡がないから見えない」って言いましたよね……?

「俺はかなり目が悪いからな、眼鏡なしで知らない風呂は危ない」

それはそうだろうけれど!
なんか負けた気がするのはなんでだろう……?

「……私も眼鏡かける」

「待て」

勢いよく立ち上がり、眼鏡を取りに行こうとしたものの、海星さんに止められた。

「普通の眼鏡を風呂で使うと熱と湿気で劣化する」

「うっ」

眼鏡が壊れるのは、困る。
しかし。

「でも自分だけ眼鏡とか狡くないですか」

「言っただろ?
俺は眼鏡なしだとよく見えないから、特に初めての風呂は危ない」

確かに海星さんはかなり目が悪い。
私は眼鏡がなくても携帯の画面なんかは確認できるが、彼は顔をくっつけるようにして見ていた。

「それより」

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