孕むまでオマエを離さない~孤独な御曹司の執着愛~
「ああ。
本館は昔の石油王の屋敷を改築したものなんだ」

それでかと納得した。
石油王の屋敷は訪れたことはないが、華族の屋敷は訪れたことがある。
あれに近いものを感じていたが、当たらずとも遠からずだったようだ。

「じゃあ、離れは……?」

あそこもかなり豪奢な作りだった。
くだんの石油王のものなんだろうか。

「あそこは妾を囲っていた部屋だ」

「妾……?」

少し考えて昔の愛人だとようやく気づいた。

「二代目の当主はあそこに妾を囲い、淫蕩に耽っていたそうだ」

「へ、へぇー……」

反応が微妙になる。
淫蕩に耽っていた部屋とは今回の旅行にぴったりだが、その相手が愛人なのが引っかかった。
海星さんは自分の母親と重なったりしないんだろうか。

「俺も花音をどこかに閉じ込めて、誰にも会わせないようにしてしまいたい」

私を見下ろし、彼が顎を持ち上げる。
レンズの向こうから私を見つめるブラックダイヤモンドからは、なにを考えているのか読み取れなかった。

「海星、さん……?」

「こんな誰でも来られるところじゃなく……そうだな。
船でしか行き来できない孤島がいい」

< 176 / 248 >

この作品をシェア

pagetop