孕むまでオマエを離さない~孤独な御曹司の執着愛~
そもそも、私たちは担当だから招待されているが、海星は関係企業の重役として招待されているのだ。
私たちとは待遇から違う。

車の中で右田課長はずっと無言だった。
FMラジオからパーソナリティの明るい声が虚しく響く。

……き、気まずい。

海星が迎えに来てくれたあの飲み会から、右田課長とは仕事の話しかしていない。
あんな話を聞かされて、どんな顔をしていいのかわからなかった。

途中、トイレ休憩をかねてコンビニへ寄ってくれた。
用事を済ませ、喉が渇いていたのでお茶を買って店を出る。
右田課長は外で、誰かと電話をしていた。
すぐに私に気づき、ロックを解除してくれる。
小さく頭を下げ、先に乗って待った。

「待たせたな」

「いえ」

少しして戻ってきた課長はシートベルトを締め、車を出した。

また、無言が車の中を支配する。
あと一時間はこの状況に耐えなければならない。
今までなにを話していたっけ?
考えるけれどちっとも思い出せない。
けれど少なくとも、こんなに居心地の悪い時間ではなかったのだけは確かだ。

「盛重さんはなにも聞かないんだな」

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