孕むまでオマエを離さない~孤独な御曹司の執着愛~
唐突に声をかけられ、飲みかけていたお茶が変なところに入る。

「ごほっ、ごほっごほっ、ごほっ」

おかげで盛大にむせた。

「あ……。
すまん」

申し訳なさそうに課長が詫びてくる。

「……はぁ。
いえ」

呼吸を整え、どうにかそれに応えた。

「それで。
あんな話を聞いて、僕になにも聞かないんだな」

その問いにはどう答えていいのか困った。

「その。
ああやって第三者から勝手に話をされるのは、右田課長も不本意じゃないのかなって思って」

だからこそ、聞かなかったことにするのがいいと思っていた。
なのに彼から話を振られて、どうしていいのかわからない。

「盛重さんらしいな」

小さく笑った課長は、どうしてか淋しそうに見えた。

「僕は盛重……あえて坂下さんと呼ばせてくれ。
僕は坂下さんが好きだったよ」

そういう課長の顔は、さっぱりしている。

「改めてこんな話を聞かされても困るとは思うけど。
でも、僕の口からきちんと気持ちを伝えておきたかったんだ」

吹っ切れた、彼の表情からはそう読み取れた。

「いえ。
尊敬する右田課長にそう言っていただけて嬉しいです。
ただ、気持ちには応えられないですが」

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