孕むまでオマエを離さない~孤独な御曹司の執着愛~
私も、右田課長も挨拶回りが忙しい。

「この度は大変お世話になりました」

「えっと……」

相手の男性はぼーっと私を見ていたが、挨拶をされて戸惑いの表情を見せた。

「盛重……坂下です」

「ああ!
坂下さん!」

私が名乗り、合点がいったとばかりに彼は明るい声を上げた。

「すっかり変わられていて、驚きました」

「ありがとうございます」

苦笑いでそれに答える。
最近は対面でのやりとりをほぼしていなかったので、ほとんどの人が同じような反応だった。

にこやかに相手と会話を交わしながら、前方の人だかりをさりげなく見る。
そこでは海星が、多くの女性に囲まれていた。

「マグネイトエステートの社長の息子さんなんですか」

「ええ、まあ」

会話をしながら海星の視線がこちらを向く。
目のあった彼は私にだけわかるように、右の口端を僅かに持ち上げた。

……なにあれ!
デレデレしちゃって。

私には人に盗られると困るから眼鏡を外すなとか言っておいて、自分はあれとか許せない。
やっていられないと、お酒を呷ったのがいけなかった。

「大丈夫か」

「すみません……」

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