孕むまでオマエを離さない~孤独な御曹司の執着愛~
傾きながら近づいてくる顔を、ただ見ていた。
柔らかい彼のそれが私の唇に触れて、離れる。

「……ごめん」

「なにを、やっているんですか」

課長が小さく呟くのと、海星の声が聞こえてきたのは同時だった。

「かい、せい……?」

声はとても静かだったが、これ以上ないほど怒っているのはすぐにわかった。
怖くて後ろを振り返れない。

「なにって?
見たとおりですが」

立ち上がった右田課長が、頬を歪めて挑発的に笑う。

「彼女が私の妻だとご存じですよね」

「ええ。
知っていますが、なにか?」

私の頭の上で、海星と右田課長が話しているのを茫然と聞いていた。

「なのに彼女にキスするとは、どういうおつもりですか」

「どういうつもりもなにも、そういうつもりですが」

……右田課長にキス、された。

おそるおそる自分の唇に触れる。
気のせいだと思いたいのに、その感触は生々しいまでに残っていた。

「これは立派な犯罪ですよ」

「犯罪?
違いますね、これは同意のうえですから」

小バカにするように右田課長が笑う。

「同意……?」

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