孕むまでオマエを離さない~孤独な御曹司の執着愛~
その単語の意味を理解するとともに、みるみる血の気が引いていく。

「ちがっ!
私は同意なんて……!」

勢いよく顔を上げたら、海星と目があった。
彼は凍えるほど冷たい目で私を見下ろしている。

「嫌がってなかったんだから同意だろ」

私は否定したというのに、右田課長は詭弁を弄してきた。
私の尊敬する上司はこんな最低の人間だっただろうか。
今の彼は私の知る課長からはかけ離れていて、戸惑った。

「同意があろうとなかろうと、人妻にキスするなど問題ですよ」

「じゃあ、金で買った女に自分の子を産ませるのは問題じゃないんですか」

口を開きかけて、海星が止まる。
海星は好きになったから私を選んだ。
けれど課長が言っているのも事実で、海星も後ろめたさがあるから反論できないのだと思う。

「そんな、モノみたいに扱われて坂下さんが可哀想だ。
私なら坂下さんを大事にしますよ。
なあ、坂下さん。
盛重本部長と別れて僕のところへきたらどうだ」

私に視線を向けた右田課長がなにを考えているのかわからない。
行きの車の中で、彼は私を好きだったと言い、吹っ切れた顔をしていた。
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