孕むまでオマエを離さない~孤独な御曹司の執着愛~
……そう、好き〝だった〟と過去形だったのだ。
なのに今、どうしてこんな話をしているのだろう。

「確かに金で買ったのは事実だが、俺は花音を愛している」

私が返事をするよりも先に海星が口を開く。

「あなたが坂下さんを愛していようと、坂下さんはそうじゃない」

なぜ、右田課長が私の気持ちを勝手に決めるの?
さっきから課長はいつもの彼らしくない。

「わた、しは。
海星……盛重本部長を愛しています」

「言わされてるんだろ?
そんな嘘、つかなくていいんだぞ」

ううんと首を振り、真っ直ぐに課長と目をあわせた。

「私は海星を愛しています。
この気持ちに偽りはありません」

私が告げた途端、右田課長の顔が苦しげに歪んだ。
けれどそれは一瞬で、すぐにまたさっきまでの海星を見下した醜い顔へと戻る。

「そう言うように彼女を洗脳したのか?
酷いな」

はっ、と課長は呆れたように吐き捨てた。

「違います!
洗脳なんかされていません!
私は本当に海星を愛して……!」

「可哀想に。
本当は愛してなどいないのに、そんなふうに思い込まされて」

私を見下ろしている課長は、完全に憐れんでいた。
< 205 / 248 >

この作品をシェア

pagetop