孕むまでオマエを離さない~孤独な御曹司の執着愛~
私の手を掴み、海星は強引に歩いていく。
半ば引きずられながら振り返ると、右田課長が魂が抜けたかのようにたたずんでいた。

エレベーターの中、海星は右肩を壁に預け組んだ腕の上で指をせわしなくとんとんしている。
なにか言わなきゃとは思うが、なにを言っていいのかわからない。

そのうちエレベーターが止まったのは、スイートルームがある階だった。
無言で私の手を引いて歩き、入った部屋で海星が私をベッドに放り投げる。

「きゃっ!」

起き上がろうとしたが、そんな隙さえ与えずに彼は私を押さえつけ唇を重ねてきた。
無理矢理、舌を捻じ込んで私を蹂躙するキスは呼吸すら許してくれない。
頭がぼぅとなり、意識が遠くなっていく。
余裕なく眼鏡同士のぶつかるガチガチという激しい音がした。

「……消毒」

私から顔を離し、自身が濡らした自分の唇を彼がねっとりと舐め上げる。
ぼんやりとした頭で、それを見ていた。

「誰が他の男にこの唇を許していいと言った?」

海星の手が私の頬をぎりぎりと握りつぶす。

「ご、ごめんなさい」

私の意志じゃなかったとはいえ、右田課長にキスを許したのは間違いない。

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