孕むまでオマエを離さない~孤独な御曹司の執着愛~
一士本部長に指示されて、彼は不本意ながら私にキスしたりあんな態度を取ったりしたのだ。
どうして一士本部長に従ったのかは疑問が残るが、きっとなにかを盾に脅されたに違いない。

「……あなたのせいで右田課長は」

ふつふつと怒りが湧いてくる。
そこまで彼にさせておいて一士本部長は右田課長を切るつもりらしく、よくて左遷、悪いと解雇の処分が下りそうだと海星さんは言っていた。

「お?
なんだ」

不穏な空気を感じ取ったのか、一士本部長が身がまえる。

「あなたなんて……!」

「花音」

勢いよく立ち上がり、開いた口は海星の手に塞がれた。

「落ち着け」

彼に目配せされ、なにか考えがあるのだとおとなしくする。

「次の社長もこの家の跡取りも決まったようですし、もう私の役目も終わりかと思います。
私は戸籍も抜いてこの家から離れます。
会社も去ります」

「かい……せい?」

真っ直ぐに家族を見つめ、静かに語る彼がなにを言っているのかわからない。

「あとはあなた方でお好きになさってください。
愛人の子である私を育てていただき、ありがとうございました。
お世話になりました」

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