孕むまでオマエを離さない~孤独な御曹司の執着愛~
海星に押し退けるように振り払われ、社長が尻餅をつく。
目で車に乗るように言われ、シートに座ってシートベルトを締めた。
無言で海星が車を出す。

「かいせーい!」

すぐに社長と一士本部長の怒号が追ってきた。

無言で海星は車を走らせる。
私もなにも言えなかった。
来た道と反対方向へ走り、山を下りて街に入る。
少しして見えてきた大きめのホテルに彼は車を入れた。
チェックインを済ませ、彼は私の手を掴んで進んでいく。
部屋の中に入った途端、抱き締められた。

「ごめん」

短い彼の声は、深い後悔で染まっていた。

「なんで海星が謝るんですか?
悪いのは私です。
海星を……海星を社長にしてあげられなかった」

あんなに海星が愛してくれたのに、どうして私は先月、妊娠できなかったのだろう。
食べ物が悪かった?
それとも生活?
どんなに後悔しようと、私が一士本部長の奥様より早く妊娠できなかった事実は変わらない。

「ごめんなさい、ごめんなさい。
私が早く、妊娠できなかったから。
私が妊娠できなかったから、海星を社長にしてあげられなかった」

口からは謝罪の言葉しか出てこない。
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