孕むまでオマエを離さない~孤独な御曹司の執着愛~
我が社のふたりの盛重本部長は社長の息子だ。
特にワケありの長男、海星本部長ではなく次男の一士本部長が後を継ぐのではないかと噂されており、本人もそのつもりなのか好き勝手していた。

「……どうなるんだろ、会社」

給湯室にお盆を戻しながら、憂鬱なため息が出た。
会社の今後も不安だが、それよりも一士本部長が来たということは今日、かなり遅くなるのは確定だ。
あの人はどうでもいい仕事を持ってきては、今日中にやれなんて命じてくる。

「……また高志から怒鳴られるかな」

自分の予定から外れると同棲している彼氏の機嫌が悪くなる。
それを想像してまた、憂鬱なため息が出た。

なんだか暗い気分で部署に戻りかけたら、向こうから急ぎ足で歩いてきた男性にぶつかりかけた。

「おっと、すまない」

「いえ……」

見上げた彼は我が社のもうひとりの盛重本部長、海星本部長だった。

「すまない、一士がこちらに来ていると思うんだが」

ふわっと僅かに、上品な香りがする。
それだけで彼が、一士本部長よりも上等な男性だと感じさせた。

「はい、応接室に」

「ありがとう」

彼はお礼を言って立ち去りかけたが、すぐに足を止めて振り返った。
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