孕むまでオマエを離さない~孤独な御曹司の執着愛~
「まーまー、そう警戒しなさんなって」

ふたりのうち父親ほどの年に見えるほうがにっこりと私に微笑みかける。
それは完璧に胡散臭かった。
私よりも少し若そうなほうがこちらへ向かってきて、私の腕を掴む。

「えっ、離して!」

抵抗したものの、ずるずると部屋の中へと引きずり込まれていく。
最後には年配の男の前へ転がすように放り出された。

三島(みしま)高志(たかし)さん。
知ってますよね」

抗議の目で黙って男を睨み上げる。
知っているもなにも、高志は私の恋人だ。
男が煙草を咥え、若いほうがすかさず火をつけた。

「彼が私どもから借りたお金を返さないまま、いなくなりましてね」

困っているんだといわんばかりに男が煙草の煙を吐き出す。
それは酷く、芝居がかっていた。
けれどこれで、だいたいの事情は飲み込めた。
高志が借りた金を私に返せ、というのだろう。
そして彼らはきっとまともな金融業者では、ない。
第二ボタンまで外された、年配の男のシャツからは下品なゴールドのチェーンが覗いている。
若いほうは白シャツに黒パンツと清潔感に溢れているのが意外なくらいだ。

「一千万……だったか?」

尋ねられて若いほうが首を振り、年配の男へ耳打ちする。
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