孕むまでオマエを離さない~孤独な御曹司の執着愛~
その事情も社内どころか社外でも有名だった。

「きっと花音が嫌な思いをするから会わせたくないが、そういうわけにはいかないか」

自嘲するように彼が笑う。
それはつらそうでもあり淋しそうでもあって、胸がつきんと痛んだ。

「都合を聞いておくよ。
顔合わせはできるだけ避けられるように努力する」

そこまで嫌なのかとは思ったが、彼の事情からするとそうなのかもしれない。

そうこうしているうちに私が住んでいるマンションに着いた。
海星本部長には車で待っていてもらい、手早く当座の荷物をまとめてしまう。

「お待たせしました」

「いや、いい」

私がシートベルトを締めたのを確認し、海星本部長は車を出した。
そのまま彼が住んでいるレジデンスに戻ってくる。
昨日はいっぱいいっぱいで気にしてなかったが、駐車場にある通用口のドアは鍵など開けずに開いた。
まさか鍵がない?
そんなはずはないよね、こんなところで。

エレベーターに乗り、海星本部長は最上階である五階のボタンを押した。

「マンションの出入りは顔認証なんだ。
あとで花音も登録しないとな」

私の疑問に気づいたのか彼が説明してくれる。
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