孕むまでオマエを離さない~孤独な御曹司の執着愛~
長い黒髪をひっつめひとつ結び、なんの変哲もない黒スーツに身を包み、化粧っ気もなくお堅い黒縁眼鏡をかけた私は会社でもお局様と呼ばれていた。
まあ、それは半ば愛称のようなものだったので、そこまで気にしていなかったが。
それでもバカにされるのは腹が立つ。

「NG行為なしならいけるんじゃないか?
それとも手っ取り早く、腎臓売るか」

「金持ちの変態に売って、オレらがもうけるって手もありますよ」

「ありだな、それ。
迷惑料ももらわなきゃいけないし」

本人を前にして男たちは最低な相談をしている。
それに反吐が出たが、なにか反論したら一週間後どころか速攻売られそうで口を噤んだ。

「そんな具合で一週間後、またお邪魔します」

男は吸い終わった煙草を床に落とし、靴で踏み消した。

「よろしくお願いしますよ」

態度だけは慇懃に、男たちは帰っていった。

「……はぁーっ」

ひとりになり大きなため息が漏れる。
お気に入りのラグは煙草の火で焦げ、黒い汚れになっていた。
床まで焦げていないか、祈りたい。

「どうしよう……」

一週間で三千万も準備できる当てはない。
親類縁者から掻き集めればなんとかなるかもしれないが、迷惑はかけたくなった。
それでなくても親は自営業で、昨今の物価高や増税で喘いでいる。
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