孕むまでオマエを離さない~孤独な御曹司の執着愛~
なぜかまた眼鏡をかけさせ、彼は誤魔化すように小さくこほんと咳払いをした。
その眼鏡の弦のかかる耳は赤くなっているが、なにか照れる要因でもあったのだろうか。

「とりあえず服は俺が買ってやる。
明日にでも買いに行こう」

「えっ、でも借金の肩代わりをしてもらったうえに服まで買ってもらうわけには……!」

部屋を出ていこうとしていた海星本部長は足を止め、くるりと振り返ったかと思ったらちゅっと唇を重ねてきた。

「……は?」

おかげで間抜けにもひと言発して固まった。

「ほんと、花音は可愛いなー。
花音を俺の妻に選んで正解だったな」

「えっ、とー」

なんだかご機嫌に海星本部長は今度こそ部屋を出ていくので、私もそれに着いていった。
それにしても可愛いって誰のことだ?
高志にだって可愛いなんて言われたことがない。

ソファーに座っているように言われたので、おとなしく座る。
アイボリーの革製ソファーはフローリングの上に直接置かれていた。
その前にはダークブラウンの木製ローテーブルがあり、正面の壁には大型のテレビが掛かっている。
リビングにある家具はそれだけだった。

「どうかしたのか」

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