孕むまでオマエを離さない~孤独な御曹司の執着愛~
よっぽど私が変な顔をしていたのか、怪訝そうに海星本部長が隣に座る。
テーブルに置かれたふたつのカップからはコーヒーのいい匂いがしていた。

「あー、えっと」

なんと答えていいのか困る。
ミニマル主義なんですか
なんて聞いてもいいんだろうか。

「いえ、なんでもないです」

結局、なにも聞けなくて曖昧に笑って済ませる。
どうしてか、インテリアについては聞いてはいけない気がした。

「なら、いいが」

彼がカップを口に運ぶので、私も口をつけた。
ふくよかな香りが私を包み、リラックスさせる。
コーヒーを飲みながら鍵の設定をした。
これからここに住むのに、鍵がないと不便だもんね。

「その」

鍵の設定が終わり、携帯を置いて居住まいを正した。

「私の借金を肩代わりしていただき、ありがとうございました」

誠心誠意、心を込めて頭を下げる。
今日、砺波さんが準備していた書類の中には、私の借金を海星本部長が請け負う内容のものもあった。
弁護士さんの作ったものだから、サインすれば法的拘束力が発生する。
けれど海星本部長は迷わずにそれに、サインした。

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