孕むまでオマエを離さない~孤独な御曹司の執着愛~
「だからあれは、俺が俺のためにやったことだ。
花音が礼を言う必要はない」

こちらを向いた彼が眼鏡越しに私と目をあわせる。
その目はとても優しげに見えた。

「でも……」

「いいんだ。
それに」

腕が伸びてきて、私を抱き締める。

「花音は今まで、いっぱいつらい思いをしたんだ。
これからは俺が目一杯、花音を愛して甘やかせる。
これまでの分、いや、これまでの分以上に幸せにする」

誓うようにぐっと海星本部長の腕に力が入った。
そうか、今まで私はずっと、つらかったんだ。
でも、そんな思考すら許されなかった。
可哀想な自分に私自身、気づけなかった。
けれど海星本部長は私が知らなかった可哀想な私を見つけて、こうやって抱き締めてくれるんだ。
認めると同時に涙が頬を転がり落ちていく。

「うっ、ううっ。
うわーっ……」

泣きじゃくる私の髪を、撫でる海星本部長の手は優しい。
おかげでますます涙が出てきた。

「落ち着いたか?」

「……はい」

海星本部長が私の汚れた眼鏡を外し、唇でまだ残る涙を拭う。

「なんか、すみません」

こんなに泣いたのはいつぶりだろう
< 73 / 248 >

この作品をシェア

pagetop