孕むまでオマエを離さない~孤独な御曹司の執着愛~
ひつまぶしはひつまぶしだが、ランクが遙かに上がっている。

「あ、あの」

「以上で」

目で海星本部長に訂正を求めるが、彼は無視してしまった。

「かしこまりました」

結局、取り消しできないまま店員が下がる。

「花音、また遠慮しただろ」

レンズの向こうから軽く海星本部長が私を睨む。
怒っているのはわかるが、理由がわからない。

「ただ、奢ってもらうのに高いものは申し訳ない、っていうのなら許す。
でも花音はそうじゃないだろ」

「うっ」

図星を突かれ一瞬、息が詰まる。

「別に俺は花音が俺より高いものを頼んだからといって怒鳴ったりしない」

「……はい」

高志との外食では、私のほうが一円でも高いものを頼むといつも怒鳴られた。
私の支払いでも、だ。
海星本部長はそんなことをしないと頭ではわかっているのだが、身体に染みついた習性はそう簡単にはなくならない。

「それに俺は花音を目一杯甘やかせると言っただろ?
だから特上でも極上でも、花音が好きなモノを頼めばいいんだ」

腕が伸びてきてその長い指が、からかうように軽く額を弾く。

「……痛いです」

僅かに痛む額を、押さえた。

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