おさがり姫の再婚 虐げられ令嬢は姉の婚約者だった次期公爵様に溺愛される
 動揺で瞳が揺れる。
 けれど、ラウルから視線を外せない。

 彼の方も、虚を突かれた表情でシュゼットを見つめていた。
 澄んだ碧色の奥に、わずかな後悔がにじんでいる気がしてシュゼットは唇を噛んだ。

 王妃である自分と国王補佐が個別に会い、手紙をやり取りしていたと明るみになれば、王侯貴族を巻き込んだ大問題になる。

(私は、知らないうちに過ちを犯していたようです)

 シュゼットが真っ青になるのに気づいて、ラウルは椅子に座らせてくれた。

「……失礼しました、王妃様」

 一礼する彼は、すっかり険しい国王補佐の表情に戻っていた。
 素知らぬ顔で落ちた原稿を拾い集めて、シュゼットの前にそろえて置く。

「落とされましたよ」
「あ、りがとうございます……」

 震える声で返事をしたシュゼットに、立ち上がったラウルは耳打ちする。

「明日の夜、ここで待っています」
「!」

 低く豊かなその声は、死刑宣告のようにシュゼットの頭に響いた。
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