おさがり姫の再婚 虐げられ令嬢は姉の婚約者だった次期公爵様に溺愛される
 ラウルがあっさり認めたので、思わずシュゼットは顔を上げていた。
 彼は、難しい顔で腕を組む宰相に一礼して堂々と立ち上がる。

「私が王妃様と個人的に会っていたのは事実です。しかし、それには理由があります。陛下はご存じでしょうか。王妃様が長らくご実家で〝おさがり姫〟と呼ばれ、虐げられていたことを」

 再び会場が揺れた。

 社交界にもシュゼットの異名は流れていたので、貴族たちは「あの噂は本当だったのか」と囁きあう。
 知らなかったリシャールは戸惑っている。

 シュゼットを責める色が濃かった議会に一石を投じたラウルは、さらに揺さぶりをかけた。

「王妃様をそう呼び始めたのは、実の姉であるカルロッタ嬢だったそうです。ジュディチェルリ侯爵。あなたは侯爵夫人と共に、王妃様を屋根裏部屋に押し込めて、使用人のように扱っていたと聞いていますが?」

 剣のように鋭い目を向けられたシュゼットの父は、うろたえて席から落ちそうになった。

「いっ、今はその話は関係ないだろう! シュゼットを虐めていたのはカルロッタだ」
「何を言っているのよ! お父様やお母様だってシュゼットをないがしろにしていたじゃない!」

 二人は大勢の前だと言うことも忘れて、罪をなすりつけ合った。
 ラウルは、気色ばんだカルロッタの周りをカツカツと靴音を立てて歩く。

(会場の空気が変わりました)
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