おさがり姫の再婚 虐げられ令嬢は姉の婚約者だった次期公爵様に溺愛される
78話 恋が叶う瞬間
「!」
馬車の扉に手をかけようとしたところで、馬の陰から人影が現れた。
稲穂のように鮮やかな金色の髪と宝石をはめ込んだような碧眼は、まるで小説の中から現れたヒーローのようだ。
腕には原稿用紙を抱えていて、身につけた騎士服の袖はインク汚れがついている。
「ラウル様、どうしてここに……」
信じられない様子のシュゼットに、ラウルはほっとしたような表情になった。
すかさず扉に手をついて、客車に乗り込めなくされる。
「父上では引き留められなかったようだが、間に合ってよかった」
「お別れをしに来てくださったのですね」
黙って去りたかったが、ラウルは律儀な人だ。
仕事を抜け出してシュゼットを見送りに来たのだろう。
シュゼットは両手を重ねて頭を下げた。
「ありがとうございます。あなたのおかげで私は自由になれました」
酷い両親と姉。
つらい結婚生活。
傷跡を持つ負い目。
おさがり姫というあだ名。
シュゼットを苦しめていた全てを乗り越えられたのは、ラウルが力を尽くしてくれたからだ。
「私は今日で王都を去りますが、どうかお元気で」
悲しそうな笑みを見せられて、ラウルは真顔になった。
馬車に当てた手をぎりっと握りしめて、声を張る。
「君は、恋を叶えたくないのか?」
「え?」
きょとんとするシュゼットの前に、ラウルは抱えていた原稿用紙を差し出した。
「俺は諦めない。この国中、敵に回しても君を手に入れると決めた」
馬車の扉に手をかけようとしたところで、馬の陰から人影が現れた。
稲穂のように鮮やかな金色の髪と宝石をはめ込んだような碧眼は、まるで小説の中から現れたヒーローのようだ。
腕には原稿用紙を抱えていて、身につけた騎士服の袖はインク汚れがついている。
「ラウル様、どうしてここに……」
信じられない様子のシュゼットに、ラウルはほっとしたような表情になった。
すかさず扉に手をついて、客車に乗り込めなくされる。
「父上では引き留められなかったようだが、間に合ってよかった」
「お別れをしに来てくださったのですね」
黙って去りたかったが、ラウルは律儀な人だ。
仕事を抜け出してシュゼットを見送りに来たのだろう。
シュゼットは両手を重ねて頭を下げた。
「ありがとうございます。あなたのおかげで私は自由になれました」
酷い両親と姉。
つらい結婚生活。
傷跡を持つ負い目。
おさがり姫というあだ名。
シュゼットを苦しめていた全てを乗り越えられたのは、ラウルが力を尽くしてくれたからだ。
「私は今日で王都を去りますが、どうかお元気で」
悲しそうな笑みを見せられて、ラウルは真顔になった。
馬車に当てた手をぎりっと握りしめて、声を張る。
「君は、恋を叶えたくないのか?」
「え?」
きょとんとするシュゼットの前に、ラウルは抱えていた原稿用紙を差し出した。
「俺は諦めない。この国中、敵に回しても君を手に入れると決めた」