おさがり姫の再婚 虐げられ令嬢は姉の婚約者だった次期公爵様に溺愛される

15話 結婚相手もおさがりでした

 アンドレの膝から下りたカルロッタは、扉を開けてシュゼットを見つけるなり、にんまりと唇を引いた。

「王妃様。こんなところでどうなさったの?」
「お、お姉さま……どうして陛下と……」
「気づかなかったの? あたしと陛下は、ずっと前からこういう関係だったのよ」

 カルロッタが扉を開け放つ。
 座りこんだシュゼットが見えたアンドレは、面倒くさそうに頭をかいた。

「あー最悪。またラウルに怒られるじゃん」

 こんなときですら、シュゼットの気持ちは考えてくれないようだ。
 じわっと涙がにじんできて、シュゼットは唇を噛んだ。

 カルロッタは、シュゼットの真っ青な顔を掴み、無理やり上げさせた。
 涙でうるむ視界は、カルロッタの意地悪そうな表情でいっぱいだ。

 炎のように真っ赤な髪やこすれて伸びた口紅、蒸気した頬から薫る色気が、網膜に焼き付く。
 夫の手ではだけさせられたカルロッタのドレスの色は、彼の瞳と同じ紫だった。

(そうだったのですね)

 結婚式でのアンドレのポケットチーフは紫だった。
 式でアンドレとおそろいだったのは、純白のウェディングドレスを着たシュゼットではなく、カルロッタの方だったのだ。

 誓いの言葉を言い合う儀式の最中でさえ、アンドレはシュゼットのものにはなってくれなかった。

 胸が、くるしい。

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