おさがり姫の再婚 虐げられ令嬢は姉の婚約者だった次期公爵様に溺愛される

19話 大切なのは数少ない味方

 演技は得意ではないが、王妃らしい雰囲気の作り方はだいぶ上手くなったので、シュゼットは本音を気取られないように背筋を伸ばした。

「実は私、直感がさえているんです。また物を無くしたら私に言ってください。すぐに見つけられると思います」
「ありがとうございます。こんな優しい主に仕えられて、わたし幸せです!」

 ソバカスの侍女が感激で泣き始める。
 これまでよそよそしかった他の侍女たちも嬉しそうな顔でシュゼットに近付いてきた。

「わたしたちも感謝しています。王妃様は他の王族のように意地悪もなさらず、侍女を一人の人間として扱ってくださいます。こんな素晴らしい方、なかなかいませんよ」

「国王陛下ももうすぐシュゼット様の魅力に気づくはずです」

 残念ながらその日は来ないと思うが……。

 侍女たちは、いちだんと気合いを入れて肌の手入れをしてくれた。
 全身に真珠の粉をはたき込んで、真っ白な鳥の羽根を使って払い落とす。

 さわさわと肌をなでる感触がくすぐったくて、シュゼットはクスクスと声をもらした。

(みなさんと仲良くなれてよかったです)

 少なくともここでは、寂しい思いをせずにすみそうだ。

 笑いをかみ殺しているうちに手入れは終わった。
 花の香りをまとって寝室に入ったシュゼットは、アンドレを待たずにベッドへ入る。
 ふかふかの布団に肩までもぐると、国王の私室につながるドアが尋ねてきた。

『王妃様、今晩はノブに鍵がかかっているか確かめませんの?』
「いつもかかっているので、今晩も同じだと思います」

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