【リレーヒューマンドラマ】佐伯達男のおへんろさん
【雨宿り】
時は、春まだ遠いある日の肌寒い朝だった。
私は昨夜《ゆうべ》、東京駅から寝台特急サンライズ瀬戸号に乗ってひとり旅に出た。
私は、妻子をすてた…
仕事もすてた…
私は、四国遍路の旅をするために人生のすべてをすてた…
ここから先は、私ひとりである。
列車が高松駅に到着した。
私は、高徳本線《こうとくせん》の特急列車《れっしゃ》に乗る前に駅の中にある立ち食いうどんの店で一杯300円のかけうどんで朝食を摂った。
朝食を摂った後、私は高徳本線《こうとくせん》の特急列車・うずしおに乗って、池谷駅《いけのたに》(鳴門市)へ向かった。
列車は、50分後に列車は池谷駅《いけのたに》に到着した。
池谷駅《いけのたに》は、高徳本線《こうとくせん》と鳴門線の分かれ目の駅である。
同行二人《どうぎょうふたり》の白装束《しょうぞく》を身にまとい、頭には菅《すげ》の傘、左の首から右側に四角の黒のショルダーバッグをかけていた。
左の腰には納径帳《おしゅいんちょう》が入っているポーチがついている。
右手に杖を持っている。
おへんろ姿の私は、凍曇《いてぐもり》におおわれた灰色の空を見つめていた。
雲のすき間から、青空が見えていた。
私は、これから四国霊場八十八札所めぐりの旅に出発する。
ボロボロに傷ついた人生をいやす旅が始まった。
私は、池谷駅《えき》から歩いて、最初の札所・霊山寺《りょうせんじ》へ向かった。
私は、何も言わずに最初の札所に向かった。
最初の札所・霊山寺《りょうせんじ》に到着した。
私は、静かに手を合わせてお祈りした。
お祈りを済ませたあと、納径所《のうきょうしょ》へ行った。
納径帳《おしゅいんちょう》に最初の朱印《おしゅいん》がついた。
その後、私は徒歩で次のお寺さんへ向かった。
おへんろ開始から3日目の朝が来た。
私は、十二番札所・焼山寺《しょうせんじ》に到着した。
お寺さんに続くへんろ道は、山道であった。
へんろ道に、雪が積もっていた。
それから20分後に十二番札所・焼山寺《しょうせんじ》に到着した。
私は…
何も言わずに…
お祈りをした。
納径帳《おしゅいんちょう》に朱印《おしゅいん》をつけていただいた後、再び旅に出た。
私は、十三の番札所へ向かって歩いた。
山道を降りたあと、再び国道192号線に出た。
そこから十三番札所に向かっていた時であった。
(ザーザーザーザーザーザーザーザーザーザー…)
突然、雨が降りだした。
私は、大急ぎで雨宿りする場所を探した。
ところ変わって、JR鴨島駅前の通りにある商店街にて…
私は、たばこ屋さんの軒下で雨宿りをしていた
雨は、ザーザーと降っていたのでありました。
これは…
やみそうもないなぁ…
そんな時であった。
たばこ屋のおばあちゃんが、私に声をかけた。
「お兄さん…あんた、そんなところへいたら風邪をひくから…中へ入りや。」
私は、たばこ屋の中に入った。
中に入った私は、お接待を受けた。
おばあちゃんは、私に温かい緑茶を差し出した。
たばこ屋のおばあちゃんは、私にこう言うた。
「あんたは、東京の人?」
「はい。」
「雨はやみそうもないから…しばらくここで温まっていきや。」
「ありがとうございます。」
部屋の真ん中に置かれているダルマストーブが赤々と灯っていた。
ダルマストーブの上に置かれているアルミ制のやかんから白い湯気がたくさん出ていた。
おばあちゃんは、私にこう言うた。
「あんたは、歳はなんぼ(いくつ)や?」
「はっ…40です。」
「ほな…今が働き盛りやね…お仕事は?」
「弁護士さんだったけど…やめました。」
おばちゃんは、おどろいた声で言うた。
「弁護士さん…まあ、なんでそんないいお仕事をやめたのよ…」
私は、こう答えた。
「人を…弁護してゆく自信がなくなったのです…特に…凶悪事件を起こした被告人《ごくあくにん》の弁護ばかりをすることがイヤになったから…やめた…被告人《ごくあくにん》ばかりを弁護していたので、子供が学校できついいじめにあった…気がついたら…私は…大切なものをなくしたことに気がついた…」
おばあちゃんは、私にこう言うた。
「それでおへんろ旅に出たのね…それで、旅が終わったらあんたはどうするのよ?」
「旅が終わってから…考えます。」
私は、そう言うた後お茶をのんだ。
そして、40分後であった。
私は、お接待のお札をおばあちゃんに渡した後、再び旅に出ようとした。
この時、おばちゃんがわたしを呼び止めた。
「お兄さん…ちょっと待って。」
おばあちゃんは、私に塩むすび(おにぎり)が入っているおべんとうを手渡しながら言うた。
「これ持って行きなさい…気ぃつけてや。」
塩むすびが入っているお弁当を受け取った私は、再び旅に出た。
やがて、十七番札所・井戸寺《いどじ》に到着した。
私は、静かに手を合わせてお祈りをした。
お祈りを終えた後、私は納径所《おしゅいんじょ》に行った。
納径帳《おしゅいんちょう》に朱印《おしゅいん》をつけたあと、私は寺の境内にある井戸へ行った。
その井戸には、御利益《ごりやく》があると言う。
井戸の水面《みなも》に顔が映れば、よいことがある…
なので私は、井戸の中を見た。
井戸の水面《みなも》に、私の顔が映った。
人生に疲れたと悲しみの表情が映った。
井戸寺《いどじ》を出発した私は、再び旅に出た。
旅に出て…
今日で何日目になるかな…
私は、そう思いながら歩き続けた。
そして私は、二十三の札所・薬王寺《やくおうじ》にたどり着いた。
参拝を終えた終えたあと、納径所《おしゅいんじょ》へ行った。
納径帳《おしゅいんちょう》に朱印《おしゅいん》をつけていただいたあと、私は再び旅に出た。
私は、高知方面に向かって歩いた。
その途中、私は足を休めるために日和佐海岸に行った。
(ザザーン、ザザーン、ザザーン…)
ところ変わって、日和佐海岸の浜辺《ビーチ》にて…
ぼんやりとした表情で海を見つめている私は、さびしげな表情でつぶやいた。
私は…
どうして、弁護士になったのだ…
私は、本当は弁護士になりたくなかった…
だけど、妻の父親(義父)から『恩返しができていない!!』と言われたのでいやいや弁護士になった…
妻との結婚は、義父が『弁護士事務所を継いで欲しい。』と言うたので仕方なく結婚した。
長男は、妻の元カレ(ストーカーだった)の子だった…
なんで私は、子持ちの妻と結婚したのか?
私たち家族は、桶川(埼玉県)にある団地で暮らしていた。
私が国選の弁護人を引き受けたのはこの時からであった。
この時、長男は6つだった。
凶悪事件の被告人《ごくあくにん》弁護を引き受けたことが原因で、家族関係がおかしくなった…
この時から長男がきついいじめにあった…
育児は、妻にまかせていた…
仕事上の関係で、長男と接する機会がなかった。
裁判に勝とうが負けようが、憎まれることに変わりはない…
すごくつらい仕事だ…
義父の知り合いに日弁連の弁護士さんがいて、その知り合いの知り合いに元法務大臣がいた。
私は、その人のコネで国選の弁護人になった。
そこから、泥沼の日々が始まった。
私は昨夜《ゆうべ》、東京駅から寝台特急サンライズ瀬戸号に乗ってひとり旅に出た。
私は、妻子をすてた…
仕事もすてた…
私は、四国遍路の旅をするために人生のすべてをすてた…
ここから先は、私ひとりである。
列車が高松駅に到着した。
私は、高徳本線《こうとくせん》の特急列車《れっしゃ》に乗る前に駅の中にある立ち食いうどんの店で一杯300円のかけうどんで朝食を摂った。
朝食を摂った後、私は高徳本線《こうとくせん》の特急列車・うずしおに乗って、池谷駅《いけのたに》(鳴門市)へ向かった。
列車は、50分後に列車は池谷駅《いけのたに》に到着した。
池谷駅《いけのたに》は、高徳本線《こうとくせん》と鳴門線の分かれ目の駅である。
同行二人《どうぎょうふたり》の白装束《しょうぞく》を身にまとい、頭には菅《すげ》の傘、左の首から右側に四角の黒のショルダーバッグをかけていた。
左の腰には納径帳《おしゅいんちょう》が入っているポーチがついている。
右手に杖を持っている。
おへんろ姿の私は、凍曇《いてぐもり》におおわれた灰色の空を見つめていた。
雲のすき間から、青空が見えていた。
私は、これから四国霊場八十八札所めぐりの旅に出発する。
ボロボロに傷ついた人生をいやす旅が始まった。
私は、池谷駅《えき》から歩いて、最初の札所・霊山寺《りょうせんじ》へ向かった。
私は、何も言わずに最初の札所に向かった。
最初の札所・霊山寺《りょうせんじ》に到着した。
私は、静かに手を合わせてお祈りした。
お祈りを済ませたあと、納径所《のうきょうしょ》へ行った。
納径帳《おしゅいんちょう》に最初の朱印《おしゅいん》がついた。
その後、私は徒歩で次のお寺さんへ向かった。
おへんろ開始から3日目の朝が来た。
私は、十二番札所・焼山寺《しょうせんじ》に到着した。
お寺さんに続くへんろ道は、山道であった。
へんろ道に、雪が積もっていた。
それから20分後に十二番札所・焼山寺《しょうせんじ》に到着した。
私は…
何も言わずに…
お祈りをした。
納径帳《おしゅいんちょう》に朱印《おしゅいん》をつけていただいた後、再び旅に出た。
私は、十三の番札所へ向かって歩いた。
山道を降りたあと、再び国道192号線に出た。
そこから十三番札所に向かっていた時であった。
(ザーザーザーザーザーザーザーザーザーザー…)
突然、雨が降りだした。
私は、大急ぎで雨宿りする場所を探した。
ところ変わって、JR鴨島駅前の通りにある商店街にて…
私は、たばこ屋さんの軒下で雨宿りをしていた
雨は、ザーザーと降っていたのでありました。
これは…
やみそうもないなぁ…
そんな時であった。
たばこ屋のおばあちゃんが、私に声をかけた。
「お兄さん…あんた、そんなところへいたら風邪をひくから…中へ入りや。」
私は、たばこ屋の中に入った。
中に入った私は、お接待を受けた。
おばあちゃんは、私に温かい緑茶を差し出した。
たばこ屋のおばあちゃんは、私にこう言うた。
「あんたは、東京の人?」
「はい。」
「雨はやみそうもないから…しばらくここで温まっていきや。」
「ありがとうございます。」
部屋の真ん中に置かれているダルマストーブが赤々と灯っていた。
ダルマストーブの上に置かれているアルミ制のやかんから白い湯気がたくさん出ていた。
おばあちゃんは、私にこう言うた。
「あんたは、歳はなんぼ(いくつ)や?」
「はっ…40です。」
「ほな…今が働き盛りやね…お仕事は?」
「弁護士さんだったけど…やめました。」
おばちゃんは、おどろいた声で言うた。
「弁護士さん…まあ、なんでそんないいお仕事をやめたのよ…」
私は、こう答えた。
「人を…弁護してゆく自信がなくなったのです…特に…凶悪事件を起こした被告人《ごくあくにん》の弁護ばかりをすることがイヤになったから…やめた…被告人《ごくあくにん》ばかりを弁護していたので、子供が学校できついいじめにあった…気がついたら…私は…大切なものをなくしたことに気がついた…」
おばあちゃんは、私にこう言うた。
「それでおへんろ旅に出たのね…それで、旅が終わったらあんたはどうするのよ?」
「旅が終わってから…考えます。」
私は、そう言うた後お茶をのんだ。
そして、40分後であった。
私は、お接待のお札をおばあちゃんに渡した後、再び旅に出ようとした。
この時、おばちゃんがわたしを呼び止めた。
「お兄さん…ちょっと待って。」
おばあちゃんは、私に塩むすび(おにぎり)が入っているおべんとうを手渡しながら言うた。
「これ持って行きなさい…気ぃつけてや。」
塩むすびが入っているお弁当を受け取った私は、再び旅に出た。
やがて、十七番札所・井戸寺《いどじ》に到着した。
私は、静かに手を合わせてお祈りをした。
お祈りを終えた後、私は納径所《おしゅいんじょ》に行った。
納径帳《おしゅいんちょう》に朱印《おしゅいん》をつけたあと、私は寺の境内にある井戸へ行った。
その井戸には、御利益《ごりやく》があると言う。
井戸の水面《みなも》に顔が映れば、よいことがある…
なので私は、井戸の中を見た。
井戸の水面《みなも》に、私の顔が映った。
人生に疲れたと悲しみの表情が映った。
井戸寺《いどじ》を出発した私は、再び旅に出た。
旅に出て…
今日で何日目になるかな…
私は、そう思いながら歩き続けた。
そして私は、二十三の札所・薬王寺《やくおうじ》にたどり着いた。
参拝を終えた終えたあと、納径所《おしゅいんじょ》へ行った。
納径帳《おしゅいんちょう》に朱印《おしゅいん》をつけていただいたあと、私は再び旅に出た。
私は、高知方面に向かって歩いた。
その途中、私は足を休めるために日和佐海岸に行った。
(ザザーン、ザザーン、ザザーン…)
ところ変わって、日和佐海岸の浜辺《ビーチ》にて…
ぼんやりとした表情で海を見つめている私は、さびしげな表情でつぶやいた。
私は…
どうして、弁護士になったのだ…
私は、本当は弁護士になりたくなかった…
だけど、妻の父親(義父)から『恩返しができていない!!』と言われたのでいやいや弁護士になった…
妻との結婚は、義父が『弁護士事務所を継いで欲しい。』と言うたので仕方なく結婚した。
長男は、妻の元カレ(ストーカーだった)の子だった…
なんで私は、子持ちの妻と結婚したのか?
私たち家族は、桶川(埼玉県)にある団地で暮らしていた。
私が国選の弁護人を引き受けたのはこの時からであった。
この時、長男は6つだった。
凶悪事件の被告人《ごくあくにん》弁護を引き受けたことが原因で、家族関係がおかしくなった…
この時から長男がきついいじめにあった…
育児は、妻にまかせていた…
仕事上の関係で、長男と接する機会がなかった。
裁判に勝とうが負けようが、憎まれることに変わりはない…
すごくつらい仕事だ…
義父の知り合いに日弁連の弁護士さんがいて、その知り合いの知り合いに元法務大臣がいた。
私は、その人のコネで国選の弁護人になった。
そこから、泥沼の日々が始まった。