【リレーヒューマンドラマ】佐伯達男のおへんろさん
【ひとり酒】
こんな状況で、木江《しま》に帰ることができない…
黄昏時の吉祥寺駅前の広場の公園のベンチにこしかけている私は、ため息をつきながらつぶやいた。
こんなことになるのだったら、嫂《あね》が勤めていた障害者施設でヘルパーをしていた方がよかった…
だけど…
資格がない…
資格…
ああ!!
そうだった!!
仕事に必要な資格を取ってなかった!!
資格がないことに気がついた私は、大パニックを起こした。
どうしよう…
どうすればいいのだ…
車の運転免許証を取りたいけど、実家の家族は『車は危ないからやめておけ!!』と言われるからだめだ。
英検や漢検なら大丈夫だと思ってトライしようと思ったら問題がすごくむずかしかったから受けるのをやめた…
専門学校に行きたいと言うても『それなら付属の短大へ行けばいいのに…』と言うから話にならない…
実家の両親は『高校卒業が仕事の資格だから、無理して他の資格を取らなくてもいい!!」と言うたあと『元気な体ひとつあればどこでも働ける!!』と言うた。
だから私は、履歴書の資格の欄に『元気な体』と書いた。
それで履歴書を作成してハローワークを通じて面接に行ったのに不採用ばかりだ…
アホらしい…
シューカツやーめた…
その日の夜遅くだった。
ところ変わって、吉祥寺本町にある居酒屋にて…
テーブルの上には、日本酒2合と枝豆と冷やっことフライドポテトが並んでいた。
有線放送《ユーセン》のスピーカーから、オフコースの歌で『さよなら』が流れていた。
ひとりで酒をのんでいる私は、むなしい表情でつぶやいた。
もうイヤだ…
東京なんかイヤだ…
この時であった。
ホストクラブで一緒に働いていた先輩が私のもとにやって来た。
「おいたくや。」
「先輩。」
「座るぞ。」
先輩は、私の向かい側の席に座ったあとカルピスチューハイを注文した。
それから2分後に、カルピスチューハイが到着した。
先輩は私に対して『枝豆、いいか?』とたずねた。
私は『ああ。』と答えた。
先輩は、枝豆をつまみながら私に言うた。
「どうしたのだ?何ぞ(なにか)つらいことてもあったのか?」
先輩の問いに対して、私はこう答えた。
「シューカツ…やめた…」
「シューカツをやめた…どうするのだ?木江《しま》に帰るのか?」
私は、怒った声で『木江《しま》には2度と帰らん!!(帰らない)」と答えた。
「お前さんは、野垂れ死にを選ぶつもりか?」
「ああ…そうだよ…オヤジが資格を取るなと言うたから怒ってるのだよ!!…元気な体があればどこでもやとってもらえる言うたから履歴書の資格の欄に元気な体と書いた…そしたら…ぜーんぶ不採用ばかりがつづいた…ふざけるな!!」
私は、ものすごく怒った表情で言うたあと日本酒をガブのみした。
先輩は、私にこう言うた。
「お前さんのオヤジとオフクロは…戦前か戦中の生まれだな。」
「なんで分かるのだよ!?」
「たくやのオヤジは、戦後の混乱期に何もない状態から身を起こした…たくやのオヤジの実家はすごく貧しかったので、上の学校に行く余裕がなかった…違うか?」
「その通りだ!!」
「だけど、たくやのオヤジさんはひとつだけ大きな間違いを犯した…機械を扱う職場や熔接などの危険物を扱う仕事は資格がいると言うことを知らないんだよ…元気な体があればなんでもできる…から採用しますと言う会社なんかないのだよ…お前の父親はどこのどこまで頭が悪いのか…」
先輩は、そう言うたあとのだからカルピスチューハイを一口のんだ。
その後、私にこう言うた。
「たくや、この際だから人材派遣会社へ行ったらどうかな?」
「人材派遣会社?」
「ああ、今は正規雇用をやめたところがやめている人を雇いたくないと言うてる会社が多いのだよ…『フケーキフケーキ…』と言うて努力しないアホンダラ経営者は政治家やヤクザと交遊している時は一人前…だから日本《このくに》はだめなんだよ…人材派遣会社は大手で待遇のいいところを紹介してくれるよ…なあ、そうしろよ。」
私は、先輩にしたがう形で人材派遣会社に登録することを決めた。
この時、私は21歳だった。
黄昏時の吉祥寺駅前の広場の公園のベンチにこしかけている私は、ため息をつきながらつぶやいた。
こんなことになるのだったら、嫂《あね》が勤めていた障害者施設でヘルパーをしていた方がよかった…
だけど…
資格がない…
資格…
ああ!!
そうだった!!
仕事に必要な資格を取ってなかった!!
資格がないことに気がついた私は、大パニックを起こした。
どうしよう…
どうすればいいのだ…
車の運転免許証を取りたいけど、実家の家族は『車は危ないからやめておけ!!』と言われるからだめだ。
英検や漢検なら大丈夫だと思ってトライしようと思ったら問題がすごくむずかしかったから受けるのをやめた…
専門学校に行きたいと言うても『それなら付属の短大へ行けばいいのに…』と言うから話にならない…
実家の両親は『高校卒業が仕事の資格だから、無理して他の資格を取らなくてもいい!!」と言うたあと『元気な体ひとつあればどこでも働ける!!』と言うた。
だから私は、履歴書の資格の欄に『元気な体』と書いた。
それで履歴書を作成してハローワークを通じて面接に行ったのに不採用ばかりだ…
アホらしい…
シューカツやーめた…
その日の夜遅くだった。
ところ変わって、吉祥寺本町にある居酒屋にて…
テーブルの上には、日本酒2合と枝豆と冷やっことフライドポテトが並んでいた。
有線放送《ユーセン》のスピーカーから、オフコースの歌で『さよなら』が流れていた。
ひとりで酒をのんでいる私は、むなしい表情でつぶやいた。
もうイヤだ…
東京なんかイヤだ…
この時であった。
ホストクラブで一緒に働いていた先輩が私のもとにやって来た。
「おいたくや。」
「先輩。」
「座るぞ。」
先輩は、私の向かい側の席に座ったあとカルピスチューハイを注文した。
それから2分後に、カルピスチューハイが到着した。
先輩は私に対して『枝豆、いいか?』とたずねた。
私は『ああ。』と答えた。
先輩は、枝豆をつまみながら私に言うた。
「どうしたのだ?何ぞ(なにか)つらいことてもあったのか?」
先輩の問いに対して、私はこう答えた。
「シューカツ…やめた…」
「シューカツをやめた…どうするのだ?木江《しま》に帰るのか?」
私は、怒った声で『木江《しま》には2度と帰らん!!(帰らない)」と答えた。
「お前さんは、野垂れ死にを選ぶつもりか?」
「ああ…そうだよ…オヤジが資格を取るなと言うたから怒ってるのだよ!!…元気な体があればどこでもやとってもらえる言うたから履歴書の資格の欄に元気な体と書いた…そしたら…ぜーんぶ不採用ばかりがつづいた…ふざけるな!!」
私は、ものすごく怒った表情で言うたあと日本酒をガブのみした。
先輩は、私にこう言うた。
「お前さんのオヤジとオフクロは…戦前か戦中の生まれだな。」
「なんで分かるのだよ!?」
「たくやのオヤジは、戦後の混乱期に何もない状態から身を起こした…たくやのオヤジの実家はすごく貧しかったので、上の学校に行く余裕がなかった…違うか?」
「その通りだ!!」
「だけど、たくやのオヤジさんはひとつだけ大きな間違いを犯した…機械を扱う職場や熔接などの危険物を扱う仕事は資格がいると言うことを知らないんだよ…元気な体があればなんでもできる…から採用しますと言う会社なんかないのだよ…お前の父親はどこのどこまで頭が悪いのか…」
先輩は、そう言うたあとのだからカルピスチューハイを一口のんだ。
その後、私にこう言うた。
「たくや、この際だから人材派遣会社へ行ったらどうかな?」
「人材派遣会社?」
「ああ、今は正規雇用をやめたところがやめている人を雇いたくないと言うてる会社が多いのだよ…『フケーキフケーキ…』と言うて努力しないアホンダラ経営者は政治家やヤクザと交遊している時は一人前…だから日本《このくに》はだめなんだよ…人材派遣会社は大手で待遇のいいところを紹介してくれるよ…なあ、そうしろよ。」
私は、先輩にしたがう形で人材派遣会社に登録することを決めた。
この時、私は21歳だった。