【リレーヒューマンドラマ】佐伯達男のおへんろさん
【2008年・厳冬】
2008年の冬は、ものすごく寒い冬だった。
私は、何としてでも職を見つけようと思ってシューカツしたけど、不採用ばかりが続いた。
そして、最後に面接を受けた事業所では、面接官からこう言われた。
『木江に帰ったらどうかな…仕事はいくらでもあるし…あなたがいた私立高校の付属の短大に社会人入学の制度が始まったと聞いてるけど…』
思い切りブチ切れた私は『クソアホンダラ野郎!!』と怒鳴りつけたあと右手に作った握りこぶしでテーブルを殴りつけた。
アホらしくなったので、シューカツをやめた。
大晦日の夜だった。
私は、東武電車の浅草駅の広場のベンチに座って考え事をしていた。
面接を受けても不採用ばかりが続く…
島に帰りたくても帰ることができない…
私は、星空を見上げながらそうつぶやいた。
それから1時間後であった。
ところ変わって、ヨーロー堂(CDショップ)の前にて…
店のスピーカーからは、堀内孝雄さんの歌で『川は泣いている』が流れていた。
店の前を通りかかった私は、その場にしゃがみ込んだ。
行くところをなくした…
同時に、帰る場所もなくした。
私は、深い悲しみにくれた。
そんな時であった。
私は、私立高校にいた時の先輩と再会した。
先輩は、ホストで稼いだ大金を使って始めたレジャー事業が大成功をおさめた。
一着70万円のスーツを着て、超高価な貴金属を身につけていた…
先輩は今、優雅な暮らしを送っていた。
先輩は、私に声をかけた。
「たくやじゃねえか…」
「先輩。」
「どうしたのだ?今夜はどこで寝るのだ?」
「今夜は…野宿します。」
「アホなことを言うな…しょーがねーな、オレについて来いや。」
ところ変わって、東武電車の浅草駅近くにある居酒屋さんにて…
私と先輩は、お酒をのみながら身の上ばなしをしていた。
テーブルの上には、あつかんと料理8品が並んでいた。
有線放送《ユーセン》のスピーカーから、五木ひろしさんの歌で『凍て鶴』が流れていた。
先輩は、私に酒をつぎながら言うた。
「たくや…ほら、のめや。」
私はあつかんを一口のんだ。
先輩は、私にこう言うた。
「たくや、お前さんが派遣従業員で働いていた静岡県の工場をやめたって、本当か?」
「ああ…」
「たくやもつらかったな…どうするのだ?…木江《しま》に帰るのか?」
私は、先輩に言うた。
「木江《しま》に帰らないよ…実家《いえ》には居場所がないんだよ。」
先輩は『預かりものだ…』と言いながらカバンの中から紫色の風呂敷包みを出した。
先輩は、紫色の風呂敷包みをほどいた。
風呂敷包みの中には、大学ノートがたくさん入っていた。
「これは…何でしょうか?」
「たくやの兄嫁さんにたのまれたものだ…これをたくやに渡してくれって…」
「これは…何が書かれているノートですか?」
「何って…署名だよ。」
「署名って?」
「島のみんなが帰っておいでと言うてるのだよ。」
「悪いけど、捨ててくれ!!」
「捨てるって…」
私は、怒った声で言うた。
「何が島に帰っておいでだ…オレは、島を捨てた非情な男だよ…こんな男が島に帰って来たらなんて言われるか…」
先輩は、困った声で言うた。
「たくやは十分つらい思いをしたから帰っておいでと言うてるのだよ〜」
「島を捨てた男にこんな署名なんか猫に小判なのだよ!!捨てろと言うたら捨てろ!!」
「わかった…それじゃあ、このノートは破り捨てるよ…たくやは、島のみんなの厚意を踏みにじったからもうだめだな…ハァー…お前さんは情けない男だ!!」
先輩は、ひと間隔空けてから私に言うた。
「おいたくや…うちへ来いよ…うちのパチンコ屋で働け!!住まいも用意したぞ!!来るか!?」
私は『先輩、よろしくお願いします。』と答えた。
私は、何としてでも職を見つけようと思ってシューカツしたけど、不採用ばかりが続いた。
そして、最後に面接を受けた事業所では、面接官からこう言われた。
『木江に帰ったらどうかな…仕事はいくらでもあるし…あなたがいた私立高校の付属の短大に社会人入学の制度が始まったと聞いてるけど…』
思い切りブチ切れた私は『クソアホンダラ野郎!!』と怒鳴りつけたあと右手に作った握りこぶしでテーブルを殴りつけた。
アホらしくなったので、シューカツをやめた。
大晦日の夜だった。
私は、東武電車の浅草駅の広場のベンチに座って考え事をしていた。
面接を受けても不採用ばかりが続く…
島に帰りたくても帰ることができない…
私は、星空を見上げながらそうつぶやいた。
それから1時間後であった。
ところ変わって、ヨーロー堂(CDショップ)の前にて…
店のスピーカーからは、堀内孝雄さんの歌で『川は泣いている』が流れていた。
店の前を通りかかった私は、その場にしゃがみ込んだ。
行くところをなくした…
同時に、帰る場所もなくした。
私は、深い悲しみにくれた。
そんな時であった。
私は、私立高校にいた時の先輩と再会した。
先輩は、ホストで稼いだ大金を使って始めたレジャー事業が大成功をおさめた。
一着70万円のスーツを着て、超高価な貴金属を身につけていた…
先輩は今、優雅な暮らしを送っていた。
先輩は、私に声をかけた。
「たくやじゃねえか…」
「先輩。」
「どうしたのだ?今夜はどこで寝るのだ?」
「今夜は…野宿します。」
「アホなことを言うな…しょーがねーな、オレについて来いや。」
ところ変わって、東武電車の浅草駅近くにある居酒屋さんにて…
私と先輩は、お酒をのみながら身の上ばなしをしていた。
テーブルの上には、あつかんと料理8品が並んでいた。
有線放送《ユーセン》のスピーカーから、五木ひろしさんの歌で『凍て鶴』が流れていた。
先輩は、私に酒をつぎながら言うた。
「たくや…ほら、のめや。」
私はあつかんを一口のんだ。
先輩は、私にこう言うた。
「たくや、お前さんが派遣従業員で働いていた静岡県の工場をやめたって、本当か?」
「ああ…」
「たくやもつらかったな…どうするのだ?…木江《しま》に帰るのか?」
私は、先輩に言うた。
「木江《しま》に帰らないよ…実家《いえ》には居場所がないんだよ。」
先輩は『預かりものだ…』と言いながらカバンの中から紫色の風呂敷包みを出した。
先輩は、紫色の風呂敷包みをほどいた。
風呂敷包みの中には、大学ノートがたくさん入っていた。
「これは…何でしょうか?」
「たくやの兄嫁さんにたのまれたものだ…これをたくやに渡してくれって…」
「これは…何が書かれているノートですか?」
「何って…署名だよ。」
「署名って?」
「島のみんなが帰っておいでと言うてるのだよ。」
「悪いけど、捨ててくれ!!」
「捨てるって…」
私は、怒った声で言うた。
「何が島に帰っておいでだ…オレは、島を捨てた非情な男だよ…こんな男が島に帰って来たらなんて言われるか…」
先輩は、困った声で言うた。
「たくやは十分つらい思いをしたから帰っておいでと言うてるのだよ〜」
「島を捨てた男にこんな署名なんか猫に小判なのだよ!!捨てろと言うたら捨てろ!!」
「わかった…それじゃあ、このノートは破り捨てるよ…たくやは、島のみんなの厚意を踏みにじったからもうだめだな…ハァー…お前さんは情けない男だ!!」
先輩は、ひと間隔空けてから私に言うた。
「おいたくや…うちへ来いよ…うちのパチンコ屋で働け!!住まいも用意したぞ!!来るか!?」
私は『先輩、よろしくお願いします。』と答えた。