【リレーヒューマンドラマ】佐伯達男のおへんろさん

【ここより讃岐路…】

(ここより、喜与彦さんの物語です。)

場所は、六十六番札所・雲辺寺《うんぺんじ》にて…

参拝を終えた私は、納径帳《おしゅいんちょう》に朱印《しゅいん》をつけた後、山を降りた。

最後の札所・大窪寺《おおくぼじ》まで、あと二十二札所…

ここより、旅は終盤に入る。

私は、観音寺市の琴弾山《ことひきやま》の近くにいた。

ここには、六十八番札所と六十九番札所の二つのお寺さんがあった。

二つのお寺さんで参拝を終えた私は、琴弾山《ことひきやま》に登った。

やがて、展望台にたどりついた。

展望台から、海砂で作られた銭形が見えた。

銭形の向こう側に、波おだやかな燧灘《うみ》が見えた。

遠くには、三島川之江から西条新居浜の工場地帯が小さく見えた。

私は、ぼんやりとした表情で海をながめた。

夕方頃であった。

私は財田川にかかる大きな橋を渡って、観音寺市内《しない》へ歩いて向かった。

もう、日暮れ頃だ…

どこか宿を探さなきゃ…

夕方5時頃であった。

ところ変わって、JR観音寺駅の前にあるバス乗り場にて…

私は、広場に設置されているベンチに座って身体を休めていた。

この時、JR四国バスのロゴ入りの大型バスが乗り場に入った。

バスが停車した後、競輪場帰りのオッチャンたちが車内から降りた。

オッチャンたちは、笑いながら話していた。

「ぜんぜん当たらなかったなぁ…」
「最終レースは5-3-1のカブでかけていたのに、スッテンテンになっちまたよ。」
「どうする?」
「またカアチャンからカネ借りるよ。」
「そうだね。」

オッチャンたちの会話を聞いた私は、表情が曇った。

私は、ギャンブルと無縁で生きてきた…

家族が幸せになるためにひたすら働いた…

だが、幸せになれたとは思っていない。

仕事とは…

家庭とは…

子供の幸せとは…

何だろうか…
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