シングルマザーでしたが、オフィスビルで俺様社長と一緒に子供を育てています。

「あ、はい。奏太と言います。今１０ヶ月になります」

「そうですか。ほら、奏太君。可愛いクマのぬいぐるみですよ～」

　田中さんはクマのぬいぐるみを出してあやすのを手伝ってくれた。
　本当にいい人だ。しばらく奏太が泣き止むまで田中さんが遊び相手をしてくれた。
　ほんわかムードになっていると誰かが管理室に入ってきた。

　ドアが開くと入ってきたのは、ムスッと無愛想だが、キリッとした目に鼻筋が高く全体に顔立ちが整った男性だった。カッコいい。
　こんなにもイケメンな男性は見たことがない。思わず見惚れていると、その男性は部屋を見るなり眉を潜める。

「何だ……これは？　いつから、ここは託児所になったんですか？」

　もの凄く不機嫌そうな顔をしてくる。つり目で冷たい印象のせいか睨まれると凄く怖い。ビクッと肩を震わせた。

「おや、おはよう。悠斗(ゆうと)君。ほら、話したでしょ？　新しい管理人として働いてくれる彼女が小さなお子さんを連れて来るからと。その子のために家で昔使っていた、おもちゃなどを出してあげたんですよ！」

　田中さんはニコニコしながら説明してくれた。するとこちらをジロッと睨んできた。

「あぁ、あなたが例の……」

　納得したように頷かれた。

（えっ？　もしかして田中さん。彼に説明したのかしら？　私や奏太のことを）

　咲希は、どうしたらいいか分からずとりあえず挨拶をする。

「あ、あの……申し遅れました。私は、今日からこちらで働くことになりました。岡野咲希です。よろしくお願い致します」

　すると、彼は無表情のまま上着ポケットから何かを出すと私に近づいてきた。心臓がドキッと高鳴ってしまう。