もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
第5章 〈レッスン2〉 アフタヌーン・キス
 玲伊さんへの叶わない想いと、とうとう撮影がはじまるという緊張でほぼ眠れないまま、月曜日の朝になった。
 


 午前10時に指定された4階のドレスレンタルショップに行くと、すでに、玲伊さんと岩崎さん、そしてKALENの紀田さんとカメラマンのSHIHOさんという女性が待っていた。

 「とうとう今日からだね」
 と言ってから、玲伊さんはわたしの顔を見て、うーんと一言。

 「よく眠れなかっただろう。目の下にクマができてる」
 「わ、目立ちますか?」
 「ちょっとね」

 玲伊さんは岩崎さんに「俺のメイク道具、持ってきてくれる」と頼み、それから、わたしの頬を両手で包んだ。

 驚いて顔を上げると、彼はむにむにとわたしの頬をマッサージした。
 「見てわかるぐらいひきつってる。そんなに緊張しなくても大丈夫だって」

 人前で平気でそんなことをする玲伊さん。
 彼にはどうしてもわたしが小さい子供に見えるらしい。

 そのことが少しずつ、わたしの心に傷を増やしてゆく。

 わたしは彼の手から逃れて、ちょっと強い口調で言った。
 「でも、わたしにとっては、雑誌に載るなんて人生の一大事ですから。緊張するなっていうほうが無理です」

 玲伊さんがぷっと吹き出す。
 「ずいぶん大げさだな」

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