もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
 点検するように眺め、そしてひとつ頷くとわたしに手鏡を渡した。

「すごい。クマ、なくなってますね」
「今度、コンシーラーの使い方、レクチャーするよ。じゃ、俺は行くから」
「れい……、あ、香坂さん、わざわざありがとうございました」

 彼は片手を少し上げて答えると、部屋から出ていった。

 わたしは内心、ほっとした。

 彼の前で撮影されるのは、めちゃくちゃ恥ずかしいと思っていたから。


「じゃあ、さっそくですが」と、岩崎さんに更衣室に案内された。
「優紀さん。これに着替えてくださいね」

 手渡されたのは、体型がまるわかりになる、黒のフィットネスウエア。
 施術前の姿を撮っておくということだろう。

 どこぞのフィットネスクラブの体験者たちが、ビフォーアフターで着ているようなものだ。
 でも、お腹の出るデザインじゃなかったのでほっとした。
 もしそうなら、それこそ雑誌に載せてはいけないレベルだ。

 それにしても……

 鏡に映る自分を見て、あらためて思う。

 
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