もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
 本当に2,3カ月で、雑誌の記事にふさわしいほど変われるんだろうか、と。
 でももう、プロジェクトは走りはじめた。
 いまさら引き返すことはできない。


 着替えを終えて、パーテーションから出ていくと、控えていた別の美容師さんにさっとメイクをされ、それが終わるとSHIHOさんが「じゃあ、ここに立ってください」と声をかけてきた。

 わたしは撮影用の白布の前に立った。

「はい、もう二歩ほど下がってもらえますか。そこでオッケーです」
 SHIHOさんがカメラを構えながら、わたしに指示を出す。

「無理に笑おうとしなくていいですよ。普通にしていてくださいね」
 そう言われても、まったく慣れていない状況にまたまた顔がひきつってしまう。

 カシャカシャとシャッター音がした。
「ちょっとそのままで待っててください」

 写真をチェックしながら、SHIHOさんはまだ納得いかない様子だ。

「そうだ。加藤さん。大きく口を動かして『あいうえお』って言ってもらえますか?」
 言われた通り、あいうえおと言って口を閉じた瞬間、カシャっとシャッターが切られた。

 
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