もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~

 おそらく、つぶれるのは時間の問題、なんとか延命を図っているというのが実情だった。


 ***

 いったん出かけた祖母が「すっかり忘れてたよ」と言いながら、すぐ店に引き返してきた。

 「注文していた本が届いたって、玲伊(れい)ちゃんに連絡しておいたから。来たら渡しておくれ。その分厚い本だから」

 わたしは振り返って、レジ台の後ろの棚に置かれている本に目をとめた。
 美容関係の専門書らしい。

 「じゃ行ってくる」
 「うん」

 わ、玲伊さんが来るかもしれないんだ……

 祖母に生返事を返しながら、頭は玲伊さんのことでたちまちいっぱいになった。

 そわそわして、気持ちが落ち着かなくなったわたしは、お客さんもいなかったので、気になっていた棚の整理を始めた。

 イレギュラーな版形のレシピ本が関係のない本の間にあるのが、前からどうも気になっていた。

 ここに隙間を作れば、入るかな。

 背伸びをして、さらに手を伸ばし、その本を取り出そうと試みる。
 ギリギリ届くのだけれど、ぎっしり詰まっていてなかなか出てこない。

 あと少しで取り出せそうなんだけど……

 裏手から脚立を持ってくるのがおっくうで、思いっきり背伸びをして奮闘していると「それを取りたいの?」と後ろから声をかけられた。

 振り向くまでもない、玲伊さんの声だ。

 「わっ!」
 「おっと。危ない」

 後ろに倒れそうになったところを、玲伊さんが、がしっと抱き留めてくれた。
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